北海道の電力不足を憂う

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2018年9月6日未明に発生した「北海道胆振東部地震」によって引き起こされた全道の停電、いわゆる「ブラックアウト」。

 

地震発生から5日が過ぎた11日現在、関係者の努力や工夫のおかげで、ほとんどのエリアで停電は解消されているものの、苫東厚真火力発電所がダウンしていることもあって、電力の需給バランスはギリギリの状態が続いている。

 

2018年9月8日の北電からのプレスリリースによると、「現在あらゆる手段を駆使することによって、何とか350万kwの電力確保ができている。しかしながら、9月のピーク時には約383万kwのピーク電力が想定されており、現実的には電力が足らない。したがって道民の皆さんには差分の約20%程度の節電をお願いしたい。」とのことだ。
また、再度のブラックアウトを避けるため、想定より節電が達成されない場合には、計画停電も想定しておかなければならないという話も聞く。

 

北電からのプレスリリースに添付された資料を見ても、他者(本州)から60万kw電力を融通してもらい、火力や水力などあらゆる発電施設をフル稼働して、何とか350万kwを捻り出している状態。かなりヤバイ。まさにギリギリの綱渡り状態。老朽化している発電施設の一つでも故障すれば、即再びブラックアウトとなりかねない。

 

泊原発が休止中の現在、まずは今回の地震で損傷した苫東厚真火力発電所の一刻も早い回復が望まれる。しかし実態はあまり楽観できる状況ではないようだ。
本日夕方のニュースによると、苫東厚真1号機(35万kw)の復旧は9月末以降、2号機(60万kw)は10月中旬以降、そして4号機(70万kw)に至っては11月以降になってしまう見込みであるとのこと。4号機に至っては、タービンからの出火によってまだ点検にさえも着手できない状態であるようだ。

 

そんな中で、北海道は既に冬に向かい始めている。地震被害の大きかった厚真町の今朝の最低気温は5.4度。そして稚内では何とマイナス0.9度にまで下がってしまっている!

…ええっ?もう暖房がないと過ごせない気温じゃないか!

 

実は、本州と違って北海道は冬季の方が電力需要が多いらしい。北電のウェブページにある電力需給見通しには、「冬季の電力需要は夏季の30%増し」という資料があった。暖房等のために家庭電力が60%増加するだけでなく、融雪用などでも電力を必要とするためらしい。

ということは、苫東厚真の発電が回復しないうちに、9月中旬から下旬、そして10月と日が経つにつれてどんどん気温が下がり、暖房のための電力が必要となり、北海道内の電力需要が増加すると、使用電力抑制のために計画停電の実施が不可避となったり、再び電力需給のバランスが崩れててしまい、再び悪夢のブラックアウトが発生してしまうことが懸念される。

 

道内に建設中の発電施設があるかどうかを調べてみると…。
まず、北海道電力としては、狩火力発電所を建設中。まずは1号機(56.94万kw)が、2019年2月操業を目指して建設中です。

…今年の冬には絶対間に合わないよね。


他には、北海道ガスも同じく石狩港で発電施設を建設中です。
石狩LNG火力発電所(7.8万kW)。この発電所は 2018年10月操業予定なので、施設としてはもう完成している。後は今回の震災を受けてなるべく早い時期の操業開始を目指ているとのこと。

 

ただ、さっきも書いたように北海道はこれから日に日に寒くなっていくのに、これだけの発電施設追加でで果たして冬季に必要な電力を確保できるのか…?

 

 まずは、北海道と日本全体で知恵を絞って、現時点で採用可能な案は何でも取り入れ、供給電力量を少しでも増やすことが必要だよね。

 

具体的に想定できるアイディアはというと…
1.北海道ガスの石狩LNG発電施設の、一日も早い操業開始を目指す。
2.現在60万kwを融通してもらっている、本州からの電力融通量を増やす。
3. 既存発電施設を、フル稼働させる。

 

まず、1の北ガス石狩LNG発電施設。
既にテスト稼働もしているようだし、これについては実現可能でしょう。ただし、いかんせん発電量が少ない。
7.8万kwではまだまだ足りないよね。

 

次に、2.本州からの電力融通。これについて、恥ずかしながら自分にはこのアイディアの実現性を語ることができるような知見を持っていない。ただし、この案が有効であるのであれば、もうすでに融通量を増やしているはず。だからきっとこのアイディアの実現は難しいんだよね。

 

そして、3.既存施設のフル活用は、もう既に実施している。これ以上の発電はムリ。ていうか水力発電なんかもカウントされてるけど、氷点下20度になる冬の北海道で、水力発電って可能なの?


ということで、ありとあらゆる可能性を検討した上で…
それでも足りないならば…

泊原子力発電所の再稼働についても、検討すべきではないだろうか!


3.11以降、多くの国民が原発に対して「漠然とした恐怖や不安」を抱いている。
よくわからないがゆえに、原子力の利用について、アレルギー反応を示す人たちがいることも、承知している。
そして、泊原子力発電所の再稼働については、原子力規制委員会による基準がクリアできていないことも、事実。


…ただ今回は、少なくとも今年の冬だけは、イデオロギーではなく冷静な「リスクの比較」で判断すべきではないだろうか。


リスク評価として、どちらを選択するかを例示してみる。
case①:泊原発を再稼働させないことによって、電力供給量が少ないままとなり。電力ピーク時に老朽化した発電施設が故障するなどして電力の需給バランスが崩れ、再びブラックアウトが発生する。その結果、多くの犠牲者が出てしまうという確率
case②:泊原発を再稼働させて電力供給量を増加させることによって、ブラックアウト発生を回避する。しかし、泊原発周辺で直下型地震が発生する。泊原発は緊急停止するものの施設の損傷が大きいため、最終的には放射能事故の発生にまでつながってしまい、多くの犠牲者が出てしまうという確率


caseの①と②で、確率的にどれくらいの差が出るかを数値として表すことができないので、やや説得力に欠けるもの、case①よりもcase②が発生する確率は、それこそ「桁違いに低い」であろうことは、誰から見ても明らかなはず。

 

2018から2019年にかけての時期に、この綱渡り状態のままで乗り切ろうとしても、電力の需給バランスが崩れて大規模停電が発生してしまう確率は、低くはない(無視できない程度に高い)だろう。

 

一方で、泊源発周辺で発生する地震は、直下型の断層地震東日本大震災のようなプレート型地震ではなく、何万年・何十万年に1度の確率でしか発生しない。
ということは、今年の冬に泊原発周辺で直下型地震が発生する確率は、限りなく低いのではないだろうか。もちろん最悪の事態を想定すると、被害額が莫大なために無視はできないけど…。

 

もちろん、どちらのケースとも実際に起こる可能性は「ゼロ」ではない。
泊原発を再稼働させない場合、今年の冬のピーク需要時に大停電が発生してしまう可能性は、ある。
同じように、泊原発を再稼働したタイミングで積丹半島付近に直下型の断層地震が発生して、泊原発が大きく損傷し、原子炉がメルトダウンしてしまうことも、もちろん可能性としてはある。
ただ、その2つのケースが発生する確率の差は、何百倍・何千倍・何万倍の開きがあるのだろうか。

 

そして、真冬の北海道でブラックアウトが発生してしまった場合、一体どれくらいの人的被害が発生するのだろうか。自分には想像できない。
大停電が発生してしまった場合、北海道の人たちはどうやって命をつないでいけるのだろう。


刻一刻と時は過ぎ、一日一日寒くなってくる。
電力需要が増えていく。


今から動きだしても、もう手遅れなのかもしれないが、大停電発生のリスクを回避するため、すぐにでも泊原発の再稼働について具体的な検討を始めるべきではないだろうか。